砂上の楼閣

「信用というものは砂の上に築くお城のようなものである。築くにはエイエイとした大変な努力が要るが、崩れるときはあっけなくもろいものだ。決してあぐらをかくことのできない、さらにさらに努力を重ね続けてこそ維持できるものなのだという含蓄のある言葉です。」※

信用にそういった面があるのは事実です。しかし砂地に面しているのは信用ではなく信頼ではないかとも考えることができます。流砂に飲み込まれそうな基礎の上に立派な実績が建てられています。信頼がなければ実績も残せません。実績は目に見える、客観的な形で残ります。目に見える形にした実績を足掛かりに新たな信用を築きます。立派な楼閣の一部を見せることで人々を安心し、資金を調達でき、より立派な楼閣を作り上げていける。しかし基礎は依然として砂上にあり、時とともに流砂にのまれ風化していく。見えないものよりも目に見えるものに肖りたいのは人の常です。やがて砂上の基礎は楼閣の重みに耐えきれなくなり倒壊する。

 

そもそも信用とは常に不安や不信の上に成り立っています。二重の意味でも、立派な楼閣は砂の上にしか建たないのです。「信用は砂上の楼閣」には、砂の上にしか建たないからこそ目に見えない基礎を掘り返し、楼閣と同じように補修を繰り返していくしかない、という意味が含まれているのではないかと思います。

 

※平良章. “医療について思うこと：信用は砂上の楼閣”. 平良院長の活字になった記録.

http://www.taira-naika.or.jp/i203.html

(閲覧 2022-6-2)

 

 

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