生活の質と文学的態度との関連
2023/08/11
坂口安吾は、生活と文学とを結びつけようとした最後の日本作家といってもいいのかもしれない。彼は多くの人々が評価するように先ず一流のエッセイストであり、そして一流の作家であった。その中核にファルスがあり、生活の質の向上があるのは当然だといえる。昨今、グロテスクな絶対的滑稽はポリコレや倫理観の先鋭化によって徹底的に排除される傾向がある。パックラットたちがゴミ屋敷の中で言い合う冗談はまさにファルスであり絶対的滑稽に他ならないが、身の知らずの他人にとっては単なる有意義的滑稽になり下がってしまう。そのような一般他者に限って、パックラットたちの笑いのなかに自分たちの生活の質を向上させたいという優れた欲求があることを無視するだろう。パックラットたちを馬鹿にする限り、坂口安吾のいう、むごたらしいこと、救いのなさが救いであり、モラルのなさそれ自体がモラルであることを理解することはないだろう。同時に、文学のふるさと、人間のふるさとを知ることもないだろう。セルフネグレクトにしてもパックラットにしても、誰も生活の質を下げたくて行動しているわけではない。心理的、社会的、文化的構造の中で紆余曲折したのちにその結果になってしまったにすぎない。そして彼らはまだその生活のただ中で生きている。しかし多くの人々は彼らの生活に見切りをつけて、勝手に終わらせている。灯台下暗しとはまさにこのことである。文学的ナンセンスを実生活で継承する人々が、その実、人間の生活について「理解がある」という転回が起こり得ていることは驚愕に値する。彼らは自分たちの生活に転回する余地が残されていることを理解しているゆえに、笑うのである。
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