なぜ今頃になって市民教育なのか 2

市民教育(Citizenship Education)の本家本元であるイギリスも、学校が一丸となって当該地域に参画し、権利やら人の性やら組織の心理性やらが複雑怪奇に絡まる諸問題を洗い出したり解決したりという市民教育本来の活動の成果を出したわけではなかった。

現代日本の若者と同じような状態を四半世紀以上前から抱えつつも鉄の女の時代(とそれから続くメージャーの時代)を経て労働党が練り上げた市民教育によって若者の投票率は少し回復したのかもしれないが、結局のところ移民の問題などが大きく絡みEUを離脱する結果になったのは記憶に新しい。

イギリスで市民教育の必修化とほとんど同時期に移民問題が表面化し、その不安や恐れを氷解できなかったことは対岸の火事として済まされることではない。

 

国力や経済力の上昇や回復が自動的に個人の生活の安定と結びつくことはない、ということもまた鉄の女の時代で再認されたことのひとつだった。

市民教育の重要な目標にある、「義務と権利の相互作用の構築」のように上と下とが交互に入れ替わりながら形を作り続けていく必要があった。

 

彼女たちの理想だった「国民の自助努力」を肯定的に捉えると、現在の状況を考えるに彼女は経済に対して楽観視をしているわけではなかったと言えるかもしれない。

 

私は経済や政治に詳しいわけではないため詳細は分かりかねるが、その政策がさまざまな格差拡大の要因をつくった政治経済であるのは疑う余地もない。

しかし鉄の女とその時代が取れる選択肢は他にはなかったのだろう。

必ずしも柔軟であることが寛容につながるわけでもなければ、経済の立て直しが民主性の復興につながるわけでもない、という少し引いた目でみると誰もが当たり前だと思うその事実を理解できないとは思えないが、それを表現することは躊躇われたのかもしれない。

理解はしていても言えない、言わないという重たい沈黙はSNSがこれだけ発展しても減ることはない(それどころか増えていると思われる)。

市民として政治性、経済性を帯びていても私たちは官民ではないのだから極端な道化を演じる必要もなければ、ひとり相撲の沈黙を守り続ける必要もない。

だからこそ「国民の自助努力」が必要とされている。

結果的にそうした状況になり鉄の女にとっては嬉しい誤算だったのかもしれないが、市民教育への流れを意図的であろうが無意図的であろうが形成できたことは評価されるべきだ。

それが副次的な結果だったとしてもそれはそれで何の問題があるのだろうか。

新自由主義による多数の犠牲者に祈りを捧げ、彼らの犠牲が無駄ではないことを伝えられるのは、今もその犠牲者を出し続けている現代社会の中枢ではなく、私たち市民であることだけは変わりない事実である。

 

 

参考文献

Crick,Bernard,Rowland.(著)

鈴木崇弘, 由井一成(訳)

長沼豊, 大久保正弘(編) (2012)

「社会を変える教育 英国のシティズンシップ教育とクリック・レポートから」

キーステージ21

 

 

お問い合わせ ⇐こちらをクリック

 無料見積り・24時間受付中

・広島県全域
広島県広島市中区｜広島市東区｜広島市南区｜広島市西区｜広島市安佐南区｜｜広島市安佐北区｜広島市安芸区｜広島市佐伯区

廿日市市｜広島県大竹市｜広島県呉市｜広島県江田島市｜広島県安芸高田市｜広島県東広島市｜広島県竹原市｜大崎上島町｜広島県尾道市｜広島県三原市｜広島県福山市｜広島県府中市｜広島県三次市｜広島県庄原市

広島県神石郡神石高原町｜広島県山県郡安芸太田町｜北広島町｜広島県安芸郡府中町｜海田町｜熊野町｜坂町｜広島県世羅郡世羅町

・隣接県
山口県｜岡山県｜島根県｜鳥取県